Yokohama Research Institute · Bulletin
ブロイラーの体系
連合弛緩とは何の崩壊なのか
Le système de Bleuler
松石 竹志Takeshi Matsuishi, M.D., Ph.D. · 横浜基礎研究所
Septembris MMXXVI二〇二六年九月
教科書を読む。
エーの読解を追う。
連合弛緩の前提を掘る。
話す中身は、当日資料にすべて書いてあります。
米とベーコン、玉ねぎとニンニク。
無人の家。山に向けた机。本とノートと鉛筆。
二五歳のエーが訳していたのは、一四年前のドイツ語の大著であった。
Die Wiege vieler Wahnideen
sind die akuten Zustände.
急性期は多くの妄想観念の揺りかごである。
vieler ≠ aller
「多くの」であって「すべての」ではない。
この一語が、第二回の伏線になります。
この一文は箴言ではない。
「妄想観念の成立と運命」——
そう題された節の、冒頭に置かれた宣言である。
… als „Residualwahn“ (Neißer)
in den „sekundären“ Zuständen fort.
急性期に生まれた妄想が、状態を越えて残る。
ブロイラーはそれに名を与えている。
薄暮状態では数週間。
意識清明な患者では、しばしば数年。
急性状態とは、同じ内容が桁違いの速さで結晶する場である。
症例の詳細は当日資料へ。
Quinque opera
一冊の著者ではない
エーが読んだのは体系全体である
Comparatio
問いの向きが逆である
心理学なき精神医学は、
生理学なき疾患学である。
Bleuler, Lehrbuch der Psychiatrie, 第 1 版序文
Structura
構成それ自体が主張である
正常心理学 → その病的変形 → 疾患単位
患者と健常者の違いは
量的なだけである。
自閉的思考は、夢・神話・詩・哲学と連続している。
Thesis
骨は弱くなっている
一次症状と二次症状
Le principe de l’écart organo-clinique
あいだに介在するもの
「連合が弛緩している」から
「脳に病変がある」へ——
この橋は、どこに架かるのか。
Duae traditiones
橋が架かるのは、どちら側か
連合弛緩とは、症状の記述ではない。
人間的思考を成立させる条件そのものの崩壊
についての主張である。
なお、それは単語連想実験によって測定可能なものとして出発していた。
Das ist ein Glaubensbekenntnis
und es fehlt nicht an Anfechtungen.
これは信仰告白であり、異論に事欠かない。
Paradoxon
診断に有用な症状こそ、欠如しうる
次回——一九二六年八月、ローザンヌ。
ブロイラー本人が来て、フランス精神医学と正面から向き合った六日間。
本日そろえた道具が、その討論を裁くために要ります。