| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| maladie de l'âme 〔仏〕 | 魂の病(確定) | 書名概念。ギリシア語 nosos tēs psychēs、ラテン語 morbus animi の訳語系列を束ねる。身体の病とのアナロジーが成立するか否か、という問いが全巻を貫く。 | 全巻 |
| médico-philosophique 〔仏〕 | 医学=哲学的(確定) | 副題の鍵語。医学と哲学が「魂の病」の管轄権をめぐって対話・競合する伝統そのものを指す。ハイフンを「=」で写す。 | 序論 |
| passion 〔仏〕 / pathos 〔希〕 / perturbatio 〔羅〕 | 情念(確定) | ストア派的文脈の中心語。キケローは pathos の訳語として morbus(病)でなく perturbatio(動転)を選んだ——この翻訳選択自体が第Ⅲ章の主題の一つ。 | Ⅲ |
| aegritudo 〔羅〕 | アエグリトゥード(悲苦)〔暫定〕 | 『トゥスクルム』第3巻の主題。魂の「病苦」のうち悲嘆・苦悩の系列。リペマニー前史として重要。訳し分け(悲苦/心痛)は原本照合後に確定。 | Ⅲ |
| proclivitas 〔羅〕 | 傾性〔暫定〕 | 病への「傾きやすさ」。Tusc. IV の術語で、体質論と道徳論の蝶番。印刷p.292前後※。近代の「素因 prédisposition」概念史への接続点として本紀要の関心事。 | Ⅲ |
| metriopatheia 〔希〕 | メトリオパテイア(情念の中庸)(確定) | ペリパトス派の「情念の適度」。ストア派の apatheia がこれを批判する構図。第Ⅲ章「メトリオパテイア批判」節。pinel-virgile 3-2 注[8]と直結。 | Ⅲ |
| apatheia 〔希〕 | アパテイア(無情念)(確定) | ストア派の理想状態。「情念は何の役にも立たぬ」(第Ⅲ章の節題)という徹底否定の立場。 | Ⅲ |
| propatheia 〔希〕 | プロパテイア(前情念)〔暫定〕 | セネカ『怒りについて』の生理学:意志に先立つ身体的動揺(顔面紅潮・涙など)は情念そのものではない、とする区別。 | Ⅲ |
| euthymia 〔希〕 | エウテュミア(快活・心の平静)〔暫定〕 | デモクリトス由来。第Ⅴ章の表題概念で、「魂の病」の認識と治癒の到達点。「上機嫌」「平常心」等の訳もありうるため暫定。 | Ⅴ |
| imaginaire 〔仏〕 | 想像界〔暫定〕/想像的なもの | 本書の方法論的中心語。「想像界の首尾一貫性 cohérence de l'imaginaire」(序 p.24)への信が方法論的信仰告白をなす。患者の想像界と医師(治療者)の想像界の区別(序 p.26)。本書は後者に限定。 | 序論・全巻 |
| cohérence imaginaire 〔仏〕 | 想像的首尾一貫性(確定) | 学識的修辞が織り上げる「病の前=科学的宇宙」の内的秩序(序 p.16–17)。バシュラール「認識論的障害物」の早期適用批判(=それは実は「美学的障害物 obstacle esthétique」)と表裏。 | 序論 |
| taedium uitae 〔羅〕 | タエディウム・ウィタエ(生の倦怠)(確定・音写併用) | ルクレティウス第3巻・セネカ『心の平静について』の「生きることへの嫌悪」。キケローの aegritudo との対立に「大きな認識論的価値」(序 p.18–19)。序 p.23 では aegritudo:taedium = フロイトの喪:メランコリーという大胆な対置。第Ⅱ章では第3巻1053–1075行の「自己から逃げようとして家を出ては戻る」大詩句の症候として具体化——ピジョーはこれを「その論理的帰結が自殺」と評しつつ、ルクレティウス個人への遡及的診断(ログレ)には慎重な留保を示す(p.205–207)。 | 序論・Ⅱ・Ⅲ・Ⅴ |
| aisthēsis tou sōmatos 〔希〕 | 身体の感覚(確定) | 『古い医術』第9章。健康の唯一の尺度。ピジョーはこれを普遍化可能な感受性(Festugière, Diller)でなく個体的感受性と解する(序 p.12)。「自分を自分として感じること se sentir soi-même」の出現とともに本書の身体論の基底。 | 序論・Ⅰ |
| thorybos 〔希〕 | トリュボス(動転・騒擾)〔暫定〕 | エピクロスにおいて魂が守られるべき「混乱」。ピジョーが「美しいギリシア語」と呼ぶ——あらゆる形の動転と「恐怖の鈍い響き」(序 p.18)。 | 序論・Ⅱ |
| anoia / amathia 〔希〕 | アノイア(分別喪失)/アマティア(無知)〔暫定〕 | 『ティマイオス』86b:魂の病=アノイアがマニアとアマティアに二分される。本書の哲学側コーパスの出発点(序 p.17)。 | 序論・Ⅰ・Ⅲ |
| diadose 〔希〕 | ディアドシス(分配・伝達)〔暫定〕 | 栄養の分配と伝染物(contage)の伝達の双方を包む語。プルタルコス『神罰の遅延』では「道徳的伝染」の論証に転用(序 p.25)。医師たちの想像界に属する概念が道徳に借用される好例。 | 序論・Ⅱ |
| contage 〔仏・羅 contagium〕 | 伝染物・伝染因〔暫定〕 | contagion(伝染現象)と区別される「伝染するもの」。ルクレティウス第6巻の疫病論の鍵語(序 p.25、第Ⅱ章)。 | Ⅱ |
| mal d'être / malaise de vivre 〔仏〕 | 存在することの病/生きることの居心地悪さ〔暫定〕 | 本書が「その意識と書記への誕生」の歴史を書こうとする当のもの(序 p.14)。taedium uitae の仏語的言い換えとして機能。第Ⅱ章ではルクレティウス第3巻の死の恐怖の病を評して「哲学的メランコリー」「実存に結びついた、死に向かう存在(エートル・プール・ラ・モール)の病」と言い換えられる(p.207)。 | 序論・Ⅱ・Ⅴ |
| médecine philosophique 〔仏〕 | 哲学的医学(確定) | 序 p.26:ピネルが19世紀初頭に「創出」し、医学と倫理の出会いを引き受けたとされるもの。第Ⅰ章 p.58 ではガレノスの営為を指して「故意に(à dessein)ピネルの術語を用いる」と明言(注103は結論部を指示)——ガレノス=ピネル系譜論の要語。pinel-virgile の枠組と直結。 | 序論・Ⅰ・結論 |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| synesis 〔希〕 | シュネシス(認識)〔暫定〕 | 『神聖病論』16章の中心語。脳は「認識のための」使者・解釈者。フロネーシス・グノーメー・ディアグノーシス等と堆積的に用いられ、著者自身の区別は不分明(第Ⅰ章 p.34)。 | Ⅰ |
| hermēneus / hermēneia 〔希〕 | 解釈者/解釈・語りの仕方〔暫定〕 | 脳=空気(認識)の「解釈者」。ディオゲネス断片B1では「語りの仕方」。ピジョーの定式:脳は「シニフィアンからシニフィエへの移行の道具」(p.36)。 | Ⅰ |
| akmē / akribēs 〔希〕 | アクメー(精髄・力)/アクリベース(精確)〔暫定〕 | 空気が脳に残す二つの質。認識-行為の関係は前者で、認識-判断の関係は後者で説明される(p.35)。acribie(Avant-propos の語)の古代的源泉。 | Ⅰ |
| asē / aniē 〔希〕 | アセー(嘔気)/アニエー(悲苦)〔暫定〕 | 身体的不快と道徳的不快の古典的パラタクス(サッポー断片1、『ティマイオス』71c、『神聖病論』15,4)。文脈により訳が歪む語群として翻訳批判の対象(p.39)。lypē は「悲嘆」を保持すべし。 | Ⅰ・Ⅳ |
| parataxe(de l'âme et du corps)〔仏〕 | (魂と身体の)パラタクス・並置(確定・音写併用) | ヒポクラテス派記号論を基礎づくとされる機能的二元論の言語的形式。『体液論』9章の節の主題(予告)。 | Ⅰ |
| phrenes / kardia 〔希〕 | フレネス(横隔膜)/カルディア(心臓)(確定・音写) | 『神聖病論』17章が思考を剥奪する二つの伝統的な座。クリュシッポスは逆に思考と情動をカルディアに帰す——「考える場所で感じる」対「感じる場所で考える」の対立(p.40)。フレニティス節の座問題への伏線。 | Ⅰ・Ⅲ |
| ēthos 〔希〕 | エートス(習わし・性格)〔暫定〕 | 『体液論』9章の三項(psychē–ēthos–sōma)の中項。ピジョー解では「変化」の発生源=魂の質であり、その適用点が身体(p.42–43)。 | Ⅰ |
| gnōmē / synnoia 〔希〕 | グノーメー(思考・意識)/シュンノイア(沈思・憂思)〔暫定〕 | 『流行病』6.8.10 ヒッポトオスの召使の症例語彙。synnoia は偽プラトン『定義集』415a「言葉に出ない、悲嘆をともなう思考」。「グノーメーの一元論を病理と見なす二元論的・相互作用論的思考」(p.45)。 | Ⅰ |
| prēxis / prēgmata 〔希〕 | 現勢化/顕現〔暫定〕 | 魂の情態が身体において「行為に移る」こと(actualisation はピジョーの訳語)。魂の各情態に身体の確定した機能が対応する「厳密な並行論」の要(p.44–45)。リトレ「対象」訳への異議。 | Ⅰ |
| sécession de l'âme 〔仏〕 | 魂の分離・隠遁〔暫定〕 | 『養生法』4巻(睡眠中の魂の自立=宗教的文脈では本領)と召使症例(覚醒時の同じ分離=病の徴候)を結ぶピジョーの操作概念(p.45)。 | Ⅰ |
| recto-verso(du jugement et de la manifestation)〔仏〕 | (判断と生理的顕現の)表裏一体〔暫定〕 | クリュシッポスの情念観のピジョーによる要約:情念は判断と身体的顕現(噛みつき・腫脹・シストレー)の recto-verso(p.46)。第Ⅲ章の中心命題の予告。 | Ⅰ・Ⅲ |
| hēgemonikon 〔希〕 | ヘーゲモニコン(指導的部分)(確定・音写) | 理性的魂の原理。ガレノス「神経の起源のあるところ、そこにヘーゲモニコンがある」(『学説』V K 655、p.56)。三部分説の解剖学的定位(肝臓・心臓・脳)の頂点。座の論争の中心語。 | Ⅰ・Ⅲ |
| glyky / pikron 〔希〕 | 甘/苦(確定) | 『ティマイオス』71b の肝臓の両義的元素。ヌースはこの甘苦(doux-amer)を介して肝臓=鏡に嵐と凪をもたらす。『問題集』30巻の黒胆汁(熱くて冷たい)の祖型(p.50–51)。 | Ⅰ |
| picrocholie 〔仏〕 | ピクロコリー(苦胆汁性)〔暫定・音写〕 | 『ティマイオス』71c の lypas kai asas(悲嘆=嘔気)をピジョーが「のちにメランコリーと呼ぶものの本質的 recto-verso」と規定した際の呼称(p.51)。lypē+mania=リペマニーへの語史的伏線。 | Ⅰ |
| cause seconde / occasionnelle 〔仏〕 | 第二原因/機会因〔暫定〕 | 『国家』10巻609e以下のピジョー解:食物→身体、身体→魂は直接因ではなく、固有の過程を「引き金として起動(déclencher)」する機会因。「倫理と医学を混同しないことを強制する決定的区別」(p.55)。 | Ⅰ・Ⅲ |
| la grande exception de Galien 〔仏〕 | ガレノスの大いなる例外(確定) | 古代で唯一「哲学者でもある」と自称した医師=哲学を併合する医師、の謂(p.57)。キケロー章(第Ⅲ章)で正式に導入予定。医師/哲学者の管轄配分史の例外点。 | Ⅰ・Ⅲ |
| krasis 〔希〕 / tempérament 〔仏〕 | クラーシス・気質(確定・音写併用) | 『魂の習わし』の中心語。「可死の魂は身体の気質である」(p.59)——帰結(アンドロニコス)でなく同一性、という論理的強行。善人と悪人の別も身体のクラーシスに由来(p.65)。周囲の空気の「クラーセイス」(p.63)まで拡張。 | Ⅰ |
| eukrasia 〔希〕 | エウクラシアー(良い気質)〔暫定・音写〕 | 食物・飲料・日々の営みで身体に作り出すべき状態。これを作れば「徳に関する魂の良い気質」も作られる(p.58)——道徳の食養法化の梃子。 | Ⅰ |
| diathèse 〔仏〕 | ディアテーズ(体勢・素質)〔暫定・音写〕 | 「魂のディアテーズが身体のディアテーズの産物・反映なら、教育は食養法に置き換わる」(p.62)。近代語 diathèse(素質・体質)の医学史的淵源として、proclivitas と並ぶ素因概念史の要語。 | Ⅰ・Ⅲ |
| oikeiōsis / oikeiotēs physikē 〔希〕 | オイケイオーシス(自然的親密化)/自然的合致〔暫定・音写〕 | 各年齢はそれぞれの感情への「自然的親密性」をもつ(p.59)——クリュシッポス批判の只中でストア派概念を転用する例としてピジョーが注記。『習慣について』では習慣=自然的合致の徴または原因(p.60–61)。 | Ⅰ・Ⅲ |
| altération réciproque 〔仏〕 | 相互的変化(確定) | 長い習慣の結果が自然的合致に等しくなる機制(p.61)。ピュシス/ノモスの区別を「完全に圧殺」し、AEL 長頭族章の強制・暴力としてのノモス概念に取って代わる。ガレノスによるノモスの自然化の核。 | Ⅰ |
| nomos / physis 〔希〕 | ノモス(法・慣習)/ピュシス(自然)(確定・音写) | ガレノスの AEL 注解:ノモス=各地の生の恒常的様式=トロフェー(栄養・養育)・パイデイア・土地の習慣(p.60)。trophē の二義性(栄養/教育)は注56と呼応。ガレノスにおいて両者の差異は無(peri ethōn)。 | Ⅰ |
| sentiment moral 〔仏〕 | 道徳感情(確定) | 気質の相対主義を逃れる唯一のもの(p.66)。hyparchei touto pasin hēmin——万人に在り、推論に先立ち「ほとんど美的に」行為の善悪を弁別;社会と刑罰(死刑)を基礎づける。ダランベールの言う「説明しがたい矛盾」(p.67)=ピネルの理論的困難の予告点。 | Ⅰ・結論 |
| proairesis / askēsis 〔希〕 | プロアイレシス(選択)/アスケーシス(修練)(確定・音写) | 有徳の由来の列挙「本性・教育・選択・修練」(p.65)。由来を問わず有徳者を愛するという道徳感情論の内部で、身体決定論と自由の並存を示す語対。 | Ⅰ |
| éphédrie / ephedreia 〔仏/希〕 | エフェドリー(見張りの座)〔暫定・音写〕 | 他者による自己認識の治療的関係(p.67–69)。エピクロス派アントニウスの論攷名から借用;「座して見張る」競技者の隠喩。van der Elst「味わい方の術」訳への異議。賢者-弟子関係を形而上学と教義学から解放した、医学から哲学への最前進点。 | Ⅰ・Ⅴ |
| epanorthōsis 〔希〕 | エパノルトーシス(矯正・立て直し)〔暫定・音写〕 | エフェドロスの機能は診断より予防(プロフュラケー)と矯正に仕える——「筋や関節を再教育する」意味での再教育(p.68)。paidagōgos・epoptēs・epistatēs と並ぶ監視者語彙群の一。rééducation の古代的祖型。 | Ⅰ |
| coactor 〔羅〕 | コアクトル(強制者)〔暫定・音写〕 | セネカ『書簡』52 の第三類型:導き手のみならず援助者・強制者を要する者(p.69–70)。ガレノスのエフェドリーはこの最下層に対応——医師は哲学者の始まるところで止まる、という管轄配分の定式。 | Ⅰ・Ⅴ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| phrénitis / phrenitis 〔仏/希〕 | フレニティス(確定・音写) | sui generis の病概念として扱う方針(p.72)。カエリウス・アウレリアヌスの定義を採用:急速進行の精神疎外+急性熱+クロキュディスモス/カルフォロギー。ガレノスの確定定義:発熱+譫妄の持続の二条件(p.75)。 | Ⅰ・Ⅱ |
| alienatio mentis 〔羅〕 | アリエナティオ・メンティス(精神の疎外)(確定・音写) | フレニティスの症状の一つとして医師に固有の理論的問題を課す概念(p.71)。近代「aliénation mentale」の直接の語源的祖型として pinel-virgile と接続。 | Ⅱ |
| sui generis 〔羅〕 | それ自身の種(確定・成句のまま) | 近代病概念への包摂問題を留保し、フレニティスをそれ自体で独立した医学的実体として扱う、というピジョーの方法的選択を示す語(p.72)。 | Ⅱ |
| crocydismos / carphologie 〔希/仏〕 | クロキュディスモス/カルフォロギー(確定・音写) | フレニティスに恒常的な手の仕草——羊毛くず・藁くずを摘み取る動作。カエリウス定義の中核徴候。次節(四・その二)で主題化予定。 | Ⅱ |
| phrenes / diaphragme 〔希/仏〕 | フレネス(横隔膜)(確定・音写) | フレニティスの語源。プラトンの隠喩「隔壁」に由来する diaphragme への呼称転換をガレノスが証言(p.78)。心臓への近接性(voisinage)による思考への影響という理路。「その一」フレネス/カルディア項と直結。 | Ⅰ・Ⅱ |
| métalepse 〔仏〕 | メタレプシス(換喩)〔暫定・音写〕 | 『倫敦匿名者』が病名の由来(随伴症状からか座からか)を論じる際、無自覚に犯しているかもしれない修辞的転換をピジョーが指摘する語(p.79)。 | Ⅱ |
| Anonyme de Londres 〔仏〕 | 倫敦匿名者(確定) | アリストテレス的かつストア的な用語で魂の病と身体の病を区別しようと試みるパピルス文書(前2世紀頃)。魂の病の三区分(原発性・動的/状態的/身体原発性で魂続発性)を提示(p.80–81)。 | Ⅱ |
| maladie kinétique / maladie d'état 〔仏〕 | 動的な病/状態の病〔暫定〕 | 倫敦匿名者の魂の病の下位区分。動的=迷信・悲嘆・恐怖・貪欲;状態的=カロス(昏迷)・嗜眠。フレニティス・マニーは身体原発性で魂続発性の病に位置づく(p.80)。 | Ⅱ |
| metriopatheia 〔希〕 | メトリオパテイア(情念の中庸)(確定) | 倫敦匿名者がペリパトス派の立場として言及——賢者にも認められる中庸の情態は行為の力(ネウロン)である、とする説。ストア派(近代=モデルニ)はこれを一切認めない、との対比(p.80)。第Ⅲ章の同語彙集項目と同一語だが、ここでは匿名者の文脈での初出。 | Ⅰ(術語集)・Ⅱ・Ⅲ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| phantasia 〔希〕 | ファンタシアー(想像・表象)(確定・音写) | ガレノスによればクロキュディスモス/カルフォロギーの仕草はこれに由来する——患者は眼のうちにあるものを外部にあると思う(p.84)。知覚論の中心語として次節(アスクレピアデスの知覚理論)へ接続。 | Ⅱ |
| jugement / perception 〔仏〕 | 判断/知覚(確定) | ガレノスの理論的介入の核:フレニティス患者には知覚が病む型と判断が病む型がある(p.85)。回復期患者の証言により、クロキュディスモス/カルフォロギーが隠喩でなく「真理そのものの表現」であることが示される。 | Ⅱ |
| enarchea 〔希〕 | エナルケア(現実性)〔暫定・音写〕 | 『プロレーティコンⅠ』5「フレニティス患者における夢は現実性をもつ」の鍵語。ガレノスの判断/知覚の区別によってのみ理解可能な難句(p.85–86)。 | Ⅱ |
| signe principal / symptôme 〔仏〕 | 主要徴候/症状(確定) | カエリウスの体系:フレニティス成立に必須の徴候群(熱・アリエナシオン・カルフォロギー+クロキュディスモス・特定の脈)と、程度・性格の差異を示すにすぎない徴候(症状)の区別(p.87)。 | Ⅱ |
| de Prorrhétique I à Pinel 〔仏〕 | 「プロレーティコンⅠからピネルへ」(確定・成句のまま) | フレニティス概念の定義の「奇妙な精確さと恒常性」を評してピジョーが用いる圧縮的表現(p.88)。諸学派は定義そのものを争わない——争われるのはアスクレピアデスの定義のみ(病因論を定義に含めるため)、と予告(→p.192)。 | Ⅱ |
| alienatio 〔羅〕 | アリエナティオ(疎外)(確定・音写) | アスクレピアデスのフレニティス定義の中核語——「脳膜内の微小粒子の閉塞によるアリエナティオと発熱の病」(p.90)。発熱なきアリエナティオ(薬物・情念による)との対比が定義に組み込まれる。pinel-virgile の alienatio mentis 項(読解ノート四・その一)と直結。 | Ⅱ |
| immensa ira / nimius timor / maestitia 〔羅〕 | 激しい怒り/過度の恐怖/悲嘆〔暫定〕 | アスクレピアデスが発熱なきアリエナシオンの原因として薬物と並べて挙げる三情念(p.91)。フレニティス(発熱をともなうアリエナシオン)からの鑑別のために定義に組み込まれる、情念単独による精神疎外の古代的承認。pinel-virgile の情念=精神疎外原因論の最重要古代先蹤の一。 | Ⅱ |
| manie / démence (insania) 〔希/羅〕 | マニー/デメンティア(インサニア)〔暫定〕 | アスクレピアデス(偽ガレノス『定義集』経由):緩慢で無熱のアリエナシオンをマニー(フロール)と呼び、その通称がデメンティア(インサニア)(p.91)。フレニティス(急性)/マニー(慢性)の区別の淵源候補。 | Ⅱ |
| maladie chronique / maladie aiguë 〔仏〕 | 慢性病/急性病(確定) | カエリウスがテミソンに帰す最初の区別(p.92)。ピジョーはむしろセリュンブリアのヘロディコス(プラトン『国家』が批判する「ゆっくりとした死の工夫」)に慢性病概念の尊厳の父としての位置を示唆(p.92–93)。 | Ⅱ |
| cyclus recorporatiuus / resumptiuus 〔羅〕 | 回復サイクル/回復力再建サイクル〔暫定・音写〕 | カエリウス『慢性病』第1巻に例証されるメトディスト派の周期的治療理論。前者は病そのものの克服を、後者(アナレプティコン周期)は患者の体力回復を目指す(p.93注294)。 | Ⅱ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| anima / intellectus / sensus 〔羅〕 | アニマ(魂)/インテレクトゥス(知性)/センスス(感覚)(確定・音写) | アスクレピアデスの還元系列——魂の問題を知性の問題に、知性の問題を感覚の問題に還元する(p.95)。フレニティスを知覚の病・感覚の病そのものとする企図の核。 | Ⅱ |
| antecedens perceptio 〔羅〕 | アンテケデンス・ペルケプティオー(先行知覚)〔暫定・音写〕 | 隠された事物の知性を成立させる契機。ピジョーはエピクロスのプロレープシス(先取観念)に対応すると解する(p.95)。アイステーシスとプロレープシスの結合というエピクロス的組み合わせ。 | Ⅱ |
| phantasma / uisum 〔希/羅〕 | ファンタスマ/ウィスム(表象・イメージ)(確定・音写) | アスクレピアデスの表象理論の中心語。真理の基準は表象の鮮明さ(エナルゲイア)にあり、誤りは像のぼやけ(p.97)。真理は異なる鮮明度の表象間の対立から生まれる。 | Ⅱ |
| hallucination / illusion 〔仏〕 | 幻覚/錯覚(確定) | セムレーニュがアスクレピアデス=カエリウスの論争から析出する区別(p.97)。錯覚=実在対象の悪しき知覚、幻覚=対象なき知覚。ピジョーはこれをエスキロールの区分に明示的に近づける(同頁注307)。アレタイオスでは幻覚=フレニティスの徴候、錯覚=マニーの徴候という鑑別基準に発展。 | Ⅱ |
| falsitas 〔羅〕 | ファルシタス(誤り・錯乱)〔暫定・音写〕 | カエリウスにおいてしばしば「ある感覚の障碍」を指す語(p.97)。ヘラクレス・オレステスの神話的症例(幻視のうちに近親者を敵と見誤る)に適用される。 | Ⅱ |
| signe diacritique 〔仏〕 | 鑑別徴候(確定) | カエリウス/ソラノスの功績とされる鑑別診断の術語。フレニティス・フロール(マニー)・メランコリー・胸膜炎・肺周囲炎相互の類似性から、確実な区別を得るための徴候(p.99)。マニー患者はアリエナシオンが発熱に先行し、フレニティス患者はその逆。 | Ⅱ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| furor / alienatio tardans sine febribus 〔羅〕 | フロール/無熱の緩慢なアリエナシオン(確定・音写併用) | マニーのラテン語慣用訳とカエリウスの定義(p.100)。フレニティスとの相対で定義される——両者は振舞いにおいて同一だが発熱・カルフォロギーの有無で対立。 | Ⅱ |
| lērēsis 〔希〕 | レーレーシス(老年の呆け)〔暫定・音写〕 | マニーと対照される老年の思考麻痺(グノーメース・ナルコーシス)。マニーは「その効果において騒然たるもの」(タラコーデス)という点で対比される(p.100、アレタイオス)。 | Ⅱ |
| duplex furor 〔羅〕 | 二重の狂気(確定) | プラトン『パイドロス』265bの区分——身体的原因による精神の緊張と、神的・霊感的狂気(アポロン/バッコス/恋/ムーサ由来の四種)。エンペドクレス派・ストア派にも並行する二分法(p.103–104)。古代狂気論の根本的二重性を示す。 | Ⅱ |
| allopathie / homéopathie 〔仏〕 | アロパティー(対症療法)/ホメオパティー(同質療法)(確定・音写) | カエリウスの演劇療法の原理——悲しむ者に道化芝居、陽気すぎる者に悲劇を与えて情念の質をその反対物によって矯正する(p.108–109)。アリストテレスのカタルシス(ホメオパティー的)に対立。ピネル§V「情念を破壊せず拮抗させる」原則の古代的先蹤。 | Ⅱ |
| mediocritas 〔羅〕 | メディオクリタス(中庸・平均状態)〔暫定・音写〕 | 演劇療法が目指す魂の健康な平均状態。アリストテレスのメソテース(中庸)を想起させる語だが、カエリウスにおいてはカタルシスでなくアロパティーによって達成される(p.109)。 | Ⅱ |
| terror / reuerentia 〔羅〕 | 恐怖/敬愛(確定) | 道徳療法を締めくくる権威の原理を支える二つの感情(p.110)。健康時に患者に影響力をもった人物を慎重に用いる技法。恐水病治療にも用いられると予告。 | Ⅱ |
| cure de la passion par une autre passion 〔仏〕 | 情念による情念の治療(確定) | カエリウスが「愚かな考え」として明示的に拒否する治療法(p.111–112、メデイア神話を想起しつつ)。音楽療法・恋愛の代替療法を退ける論拠。アロパティー(気分の対極による矯正、カエリウスが認める)との構造的差異に注意——ピネル§Vの実例をこの区分に照らして検討する余地がある。 | Ⅱ |
| neruositas 〔羅〕 | ネルウォシタス(神経・腱の系統)〔暫定・音写〕 | マニーにおいて冒される全身の系統、とりわけ頭部(p.106–107)。ドラブキンの訳語「神経と腱の系統」をピジョーは留保つきで採用。ヘロフィロスによる感覚神経発見との関連を示唆。 | Ⅱ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| hydrophobia / pheugydros / phobodipsos 〔羅/希〕 | ヒュドロフォビアー/フェウグュドロス/フォボディプソス(確定・音写) | 恐水病の異名群。「情念の名の製造」を思わせる名だとピジョーは評する(p.113)。カエリウスは身体の病、魂への影響は二次的と断定。 | Ⅱ |
| consensus animae corpori compatientis 〔羅〕 | 魂と身体が共苦する一致〔暫定〕 | 恐水病における恐怖の起源をカエリウスが説明する句(p.114)。ストア的心身論の要——魂の情念は判断の情念(nostri iudicii)としつつ、身体的一致による発現を認める。 | Ⅱ |
| pathocénose 〔仏〕 | パトケノーズ(病原環境)〔暫定・音写〕 | Pr. グルメクの用語。狂犬病が1世紀以前に存在したかという問いは病の歴史(医学史家の権能)に属するとしてピジョーが留保する際に参照(p.116)。 | Ⅱ |
| quantitativiste / qualitativiste 〔仏〕 | 量的論者/質的論者(確定) | プルタルコスが対話させるディオゲニアノス(魂の病の数は限定的)とピロン(混合理論により病は無限に生成)の立場(p.118–120)。魂の病の表を確定的なものと見るか否かという対立。 | Ⅱ |
| officia (corporis) 〔羅〕 | (身体の)役務〔暫定〕 | 摂理が身体の各部位に定めたとされる機能。同性愛論でカエリウスがストア的語法により導入する概念——これを軽視することが「精神の悪徳」とされる(p.120)。 | Ⅱ |
| hérédité des caractères acquis (de l'âme) 〔仏〕 | (魂の)後天的形質の遺伝〔暫定〕 | 一部の医師が同性愛の遺伝的伝達を説明するために転用した概念(p.121)。AEL長頭族章が身体について示した後天形質遺伝の、魂への類推適用。 | Ⅱ |
| répartition des tâches (médecin / philosophe) 〔仏〕 | (医師と哲学者の)任務の配分(確定) | 第Ⅱ部を貫く主題の総括的定式。マニー=医学(哲学を補助として)、恐水病=医学、同性愛=哲学、という配分をカエリウスの三章から抽出(p.121–122)。pinel-virgile が論じる医学=哲学的管轄権争いの古代的縮図。 | Ⅱ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| dysthymia 〔希〕 | デュストゥミアー(不快・落胆)〔暫定・音写〕 | ヒポクラテスのアフォリズム(恐怖とデュストゥミアーが長く続けばメランコリー)の中心語。「生の不快、生きることの悪」への意味の広がりはエウテュミア章で扱うと予告(p.123)。 | Ⅱ・Ⅴ |
| articulation (du sentiment et de l'humeur) 〔仏〕 | (感情と体液の)接合〔暫定〕 | メランコリー概念の成功の理由とピジョーが見る核心——曖昧な感情と客観的な体液(黒胆汁)との結合の自由さ(p.123)。メランコリーは医学的反省が哲学へ向かう最先端、と総括される。 | Ⅱ |
| phrontis 〔希〕 | フロンティス(精神の緊張・思考)〔暫定・音写〕 | 『病Ⅱ』の逆説的定義「フロンティス、困難な病」の中心語。リトレのヒポコンドリー解釈、およびそれをフロンティス=思考と病の意図的出会いと見るピジョーの反論の争点(p.126)。 | Ⅱ |
| hypocondrie 〔仏〕 | ヒポコンドリー(確定) | ディオクレス・ド・カリュストスに遡る、消化器症状のみに着目した部分的疾病概念(p.127)。メランコリーに吸収されるが、ピネル『疾病分類学』でも固有の病として再浮上(p.128注464、原文引用あり)。 | Ⅱ |
| synnoia tēs gnōmēs 〔希〕 | グノーメーの共知〔暫定〕 | 『流行病Ⅵ』の難句——器官も現象もなしにそれ自体で苦しむ認識。読解ノート三・その二「ヒッポトオスの召使」と同一症例への回帰(p.129)。ガレノス自身が翻訳の困難を認めた句。 | Ⅰ・Ⅱ |
| cogitatio falsa (in una re) 〔羅〕 | (一事についての)誤った思考〔暫定〕 | ヒポクラテス箴言の要約的定式——一事のみの誤った思考、他は健全。エスキロールのモノマニー概念の完全な可能性の源泉とピジョーが位置づける句(p.134)。 | Ⅱ |
| lypémanie 〔仏〕 | リペマニー(確定・既出増補) | エスキロールの定義(p.135骨子):脳の病、部分的・慢性の譫妄、無熱、悲しく衰弱させるか抑圧的な情念によって維持される。感受性の病であり、あらゆるモノマニー同様「その座は人間の心臓にある」。座の列挙(心臓・フレニックな中枢・太陽神経叢等)はカエリウスのフレニティス座列挙の直系の子孫、とピジョーは指摘。 | Ⅰ(術語集)・Ⅱ |
| monomanie 〔仏〕 | モノマニー(確定) | エスキロールの概念。ルフォス「一事についての誤った思考、他は健全」およびラーゼス(黒胆汁の脾臓から胃への逆流説)を古代的源泉として明示的に引く(p.130、134)。リペマニーは「悲しいモノマニー」。 | Ⅱ |
| imagination du réel 〔仏〕 | 現実の想像力(確定) | 疾病分類学的一覧を別の観点から見た総括的評語——医学的伝統に存する並外れた想像力(p.137)。エピクロス主義の章で再訪と予告。 | Ⅱ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| dualiste interactionniste / matérialiste 〔仏〕 | 相互作用論的二元論者/唯物論的二元論者(確定) | エピクロスの心身論の位置づけ。ポパー=エクルズの語法を援用しつつ、自由と道徳性を信じつつ魂の物質性を信じる者、と規定(p.142)。 | Ⅱ(第Ⅱ章) |
| douleur disjonctive 〔仏〕 | 離接的な苦痛(確定) | エピクロスの苦痛論の核——苦痛は身体の深さも統一性ももたず、頭・足・肺等に分割される。極端な苦痛とは一つの苦痛でなく複数の苦痛の総計(p.145–146、フィロクテテス論)。キケロー・プルタルコスの「苦痛の根本的統一性」テーゼと対立。 | Ⅱ |
| philosophie du sujet 〔仏〕 | 主体の哲学(確定) | ピジョーによるエピクリスムの総括的規定——唯物論とも多元論とも異なり、根本的に主体の哲学であり同時に存在の哲学、両者の和解の試み(p.147)。 | Ⅱ |
| physis / thesis 〔希〕 | ピュシス(自然)/テシス(慣習)(確定・音写) | デモクリトスの区別(色・音等はノモスのみによる)をエピクロスが拒否する論点(p.148)。質が純粋な慣習なら主体はありえなくなる、という論法。ソフィスト的自然=慣習論争の系譜。 | Ⅱ |
| foedus naturale 〔羅〕 | フェドゥス・ナチュラーレ(自然の契約)〔暫定・音写〕 | ルクレティウスの表現。自然であると同時に権利であるような自然、をピジョーが読み解く鍵概念(p.149)。ルソーの「神的本能」による良心の定義と比較される。第Ⅱ章第二部(アスクレピアデス「自然と権利」)への布石。 | Ⅱ |
| sentir que nous sommes 〔仏〕 | われわれが在ることを感じること(確定) | エピクロス的自己感覚論の定式。死が無であるのは、分離されたものは感受されず、感受されないものはわれわれにとって無だから、という論法の帰結(p.149)。 | Ⅱ |
| dianoeisthai / aisthanesthai 〔希〕 | ディアノエイスタイ(自己認識)/アイステーネスタイ(自己感覚)〔暫定・音写〕 | エピクロス断片Vの自己認識論とアリストテレス『ニコマコス倫理学』IX.9の自己感覚論を結ぶ対概念(p.149–150)。ボデュイス経由でMaine de Biran(前主観性概念の出現)に接続。『古い医術』のアイステーシス・トゥ・ソーマトス(読解ノート二既出)の回帰。 | 序論・Ⅱ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| limite expérimentale / limite logique 〔仏〕 | 経験的限界/論理的限界(確定) | ピジョーがド・レイシー批判のなかで提示するテーゼ——両者は同一である(p.153)。境界の機能を消極的とする通念に反対し、限界に積極性を認める。 | Ⅱ(第Ⅱ章) |
| akatonomaston 〔希〕 | アカトノマストン(名なきもの)(確定・音写) | ルクレティウスが伝える魂の第四の無名実体——風・空気・熱に続く最も微細な要素。感覚を想像するための不可欠の基盤(p.155–156)。 | Ⅱ |
| finis 〔羅〕 | フィニス(境界)(確定・音写) | ルクレティウス第3巻256行の難語。外から内・内から外への運動を止める二重機能をもつが、いかなる神経・筋肉・器官とも同定できない実体なき境界(p.156–157)。ファクトとドロワの出会いとしてピジョーが読む。 | Ⅱ |
| ontologie du corps 〔仏〕 | 身体のオントロジー(確定) | 「限界の観念」節の結語的定式。エピクリスムの思考の本質をこの一句に集約(p.158)。 | Ⅱ |
| plaisir catastématique / cinétique 〔仏〕 | カタステマティック快(状態の快)/キネティック快(運動の快)(確定・音写) | エピクロス的快の二区分。前者は存在をその限界のうちに集約し無時間の無限を生きさせる快、後者は運動における快(p.160–161)。エピクロス的身体論の中心対概念。 | Ⅱ |
| telos / peras (de la sarx) 〔希〕 | テロス(終極)/ペラス(限界)〔暫定・音写〕 | キュリア・ドクサ第20則。肉体それ自体は快の限界につき無限だが、個体としての肉は終わりと限界をもつ——エピクロスは両語を並置して同義と示す(p.162)。ディアノイアはこの限界を「発見」する調整的機能をもつ。 | Ⅱ |
| gastro-entérologie 〔仏〕 | 胃腸病学(確定・比喩的用法) | ピジョーがエピクロスの快=胃腹論を評して用いる皮肉な形容(p.165)。クリュシッポスによるアルケストラトス『美食詩』との当てこすりに由来。 | Ⅱ |
| horiston plērōma / aoristou plērōmatos 〔希〕 | 限定された充満/非限定の充満〔暫定・音写〕 | キュリア・ドクサ第59則。胃は無際限な充満を求めるという通俗的誤解への反論——胃には限定された充満がある、法的なものと自然的なものの結合(p.165)。 | Ⅱ |
| mémoire-bloc 〔仏〕 | 記憶=塊(確定) | ピジョーによるエピクロス的記憶の解釈——単発の想起(レコルダティオ)ではなく、時間のなかで凝集する「第二の自然」としての記憶の複合体。苦の不連続性に連続性で応じる(p.168–169)。フィロン『寓意的解釈』の記憶/想起区別に依拠。 | Ⅱ |
| manque d'être 〔仏〕 | 存在の欠如(確定) | 「エピクロスの健康」節結語——苦しみと病はすべて存在の欠如から来る、という定式(p.171)。快の経験と記憶の禁欲により別の存在を構成しえたなら、崩壊する自己に傍観者として立ち会いうる、というエピクロス的救済論の要。 | Ⅱ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| onkoi 〔希〕 | オンコイ(要素塊)(確定・音写) | アスクレピアデスの物理学の中心概念——管(ポロイ)を循環する、理性にのみ知覚可能な粒子。原子との異同がI.M.ロニーらの論争点(p.172–175)。 | Ⅱ(第Ⅱ章) |
| instrumentalisme 〔仏〕 | インストルメンタリスム(道具主義)〔暫定〕 | ピジョーの新造語。「機械論」がアスクレピアデスに時代錯誤であるため提案される代替概念(p.188予告)。次節で機械論的アナロジーの体系化として展開。 | Ⅱ |
| solutio (ciborum) 〔羅〕 | ソルーション(食物の溶解)(確定) | アスクレピアデスの消化否定論の核——コクション(加熱変成)を認めず、食物は生のまま個々に分解されるのみとする(p.180)。ガレノスの激しい批判対象。 | Ⅱ |
| leptomeres / spiritus 〔希/羅〕 | レプトメレス(微細な部分)/スピリトゥス(確定・音写) | 消化により生じる、熱くも冷たくもなく触知不能な微細物質——動脈・神経・静脈・肉になる(p.180–181)。エピクロスの魂の定義(微細な部分からなる物体)と酷似するが、質を認めない点で異なるとピジョーは指摘。 | Ⅱ |
| chaleur innée / puissance vitale 〔仏〕 | 生得の熱/生命力(確定) | 『養生法』的ヴィタリスムの中核概念。アスクレピアデスが体系的に否定する対象(p.179–180)。ラエネクがこの種のヒポクラテス箴言を好んで引きヴィタリスムを基礎づけたことが注記される。 | Ⅱ |
| sympatheia 〔希〕 | シュンパテイア(共感)(確定・音写) | 『養生法』のヴィタリスム的定式——万物は共感により部分と全体が機能に即して協働する(p.179)。アスクレピアデスの反ヴィタリスムが標的とする核心概念。 | Ⅱ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| animus / anima 〔羅〕 | アニムス(指導的魂)/アニマ(拡散する魂)(確定・音写) | ルクレティウスの魂の二区分。アニムスは胸に座をもち自律的な認識・感覚をもつ(ペル・セ・サピト、シビ・ガウデト);アニマは全身に拡散し身体に近い(p.196–197、200–202)。アスクレピアデスのヘーゲモニコン否定説への体系的対抗の要。 | Ⅱ(第Ⅱ章) |
| contagia (morbi) 〔羅〕 | コンタギア(病の伝染物)(確定・音写) | 身体の病が精神に浸透する過程を示す語(第3巻470–471行)。ディディトゥスと対で現れ、第Ⅵ巻の伝染理論の先触れをなす(p.201–202)。 | Ⅱ |
| rétrodiagnostic 〔仏〕 | 遡及的診断(レトロディアグノシス)〔暫定〕 | ペレッリ・ログレらがルクレティウス自身に「メランコリー」「間歇性精神病」を診断する手法。ピジョーはこれに明確な留保を示し、テクストの症候学と作者の伝記的診断を峻別する方法論的立場を取る(p.206–207)。 | Ⅱ |
| dysthymie 〔仏〕 | デュスチュミー(確定・既出増補) | ルクレティウス第3巻の「哲学的メランコリー」に与えられる名。黒胆汁なきメランコリー、実存的な「存在することの悪」。エウテュミア章で再訪予告(p.207)。メランコリー章(p.123既出)のデュストゥミアーと同語源。 | Ⅰ(術語集)・Ⅱ・Ⅴ |
| solacia uitae / tetrapharmakos 〔羅/希〕 | ソラキア・ウィタエ(生の慰め)/テトラファルマコス(四箇条の薬)(確定・音写) | エピクロスが発明した治療薬——レメディウム(身体の薬)に対するソラキウム(魂の薬)。神を恐れるな・死に危険なし・善は得やすい・悪は耐えやすい、の四箇条。エピクロスは「医師なる神」(p.208)。 | Ⅱ |
| furor animi / oblivia rerum 〔羅〕 | フロール・アニミ(魂のフロール)/オブリウィア・レルム(事物の忘却)(確定・音写) | 第3巻828行。ピジョーはプラトンのマニア/アマティアの転置と推測(p.208–209)。テレンバッハが『ティマイオス』のこの対立に循環性精神病(躁鬱病)の最古の記述を見出すことと接続。 | Ⅱ |
| antinomie circulaire (zirkuläre Antinomik) 〔仏/独〕 | 循環的対立(確定・独語併記) | H・テレンバッハの用語。プラトン『ティマイオス』のマニア/アマティア対立に見る躁鬱病の原型的記述(p.209)。本紀要別稿「躁鬱混合状態論の系譜」(ファルレ・バイヤルジェ論争)の古代的先蹤。 | Ⅱ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| contagion 〔仏〕 | 伝染〔確定〕 | 「伝染は歴史的概念である(La contagion est un concept historique)」(p.215)——その権威は医師でなく歴史家トゥキュディデス。既出「contage(伝染物)」と対をなす現象名。ピジョーは「ペスト」で現代的意味での伝染性疾患一般を指すと明記(p.212注334)。 | Ⅱ |
| anapimplēmi 〔希 ἀναπίμπλημι〕 | 満たす=汚染する〔確定・音写〕 | トゥキュディデスが伝染を隠喩的に示した動詞(II.51.4)。原義「満たす」+穢れの含意(ディラー「穢しつつ縁まで満たす」)。『パイドン』67a では身体による魂の飽和=穢れ。トゥキュディデスが穢れの文脈から医学へ移した創設的行為;以後は逆に伝染が穢れの隠喩となる(p.218–220)。 | Ⅱ |
| diadosis 〔希 διάδοσις〕 | 伝達・循環〔確定・音写〕 | プルタルコス『神罰の遅延』の伝染記述(haphai と対)。同質的な一つの全体=有機体の内部での循環という生物学的構想を内含(p.221–223)。『ティマイオス』の知覚・音の伝達、ヒポクラテス派の体内伝達(子宮→静脈→乳房等)に系譜。ガレノスでは食物の分配(anadosis と対)。 | Ⅱ |
| constitution épidémique 〔仏〕 | エピデミー的状況構成〔暫定〕 | ヒポクラテス的原義:ある場所・季節の諸病とその条件の総体の記述。伝播を含む現代的「エピデミー」とは無関係で、ガレノスはペストをこの枠(=エンデミー)へ還元しようとする(p.213–214)。 | Ⅱ |
| pankoinoi 〔希 πάγκοινοι〕 | 共通の病・普遍的病〔確定・音写〕 | 『空気・水・場所論』由来。ガレノスの推論の中項:ペスト⊂共通の病⊂ヒポクラテス既知(p.213–214)。koinos(共通)の語がガレノスに決定的。 | Ⅱ |
| prophasis 〔希 πρόφασις〕 | 誘発原因・引き金〔確定・音写〕 | ガレノス的病因論での周囲の空気の位置:第一原因は個体の性向、空気は第二原因=プロファシスにすぎない(p.218)。Rawlings 1975、F. Robert 1976 の研究が注360に。 | Ⅱ |
| epitēdeiotēs 〔希 ἐπιτηδειότης〕 | 性向・適性〔確定・音写〕 | 「いかなる原因も患う者の身体の性向なしには作用しえない」(ガレノス、p.216)。疲労・酩酊・怒り・悲しみの者が罹りやすいとする性向病因論——トゥキュディデス(体質も摂生も無力、athymia は帰結)と全面矛盾。 | Ⅱ |
| loimou spermata 〔希 λοιμοῦ σπέρματα〕 | ペストの種子〔確定・音写〕 | 身体内の物質的腐敗性(排泄物のような)。ピジョーは「病原胚種の天才的直観を見るな」と明確に戒める(p.218注359)。 | Ⅱ |
| qualitas insueta 〔羅〕 | 慣れざる質〔確定〕 | アスクレピアデス『ペスト論(De lue)』のペスト定義(カエリウス経由):規定された場所の異常な質+個体の適性+共通原因(p.217)。カエリウスは「記述でなく原因を与えた」と批判。 | Ⅱ |
| decliuitas / labilitas 〔羅〕 | 病への傾き/滑りやすさ〔暫定〕 | ソラノス=カエリウスのペスト定義:「病への傾き、共通の先行諸原因により際立ち加速された傾き」(p.217)。注357が第Ⅲ章「ストア主義と魂の病」p.291以下での検討を予告——キケロー的 proclivitas(魂の病への傾き)と同じ概念群。第Ⅲ章読解時に増補予定。 | Ⅱ・Ⅲ |
| crescendo épistémologique 〔仏〕 | 認識論的クレッシェンド〔確定〕 | ピジョー自身の鍵概念。第Ⅵ巻の順序はボワイエの言う「文学的クレッシェンドの放棄」でなく、エピクロス的観点での複雑化と困難の秩序——磁石が伝染に先行する(p.224)。 | Ⅱ |
| sympathie 〔仏/希 συμπάθεια〕 | 共感〔確定〕 | プリニウスが普遍化した遠隔作用の説明原理(火を消す水、磁石……)。首尾一貫したエピクロス主義者には許されない資源(p.224)。プルタルコスでは魂と身体が共感のうちにあるゆえの相互汚染(p.223)。 | Ⅱ・Ⅲ |
| extrinsecus 〔羅〕 | 外から〔確定〕 | エピクロス的世界の非閉鎖性の徴:世界には常に「外」がある——世界自身が無限に対してミクロコスモス(p.225、228、232)。動詞 insinuari(忍び込む)と好んで結合。エンデミー的現実は「外からの」病の到来を説明できない、というトゥキュディデス的アポリアの語でもある。 | Ⅱ |
| pistis 〔希 πίστις〕 | 信・信頼〔確定・音写〕 | 世界に対して取るべき態度=エピクロスが有機体に対して勧める態度:身体/世界の良き状態が続くだろうという信頼(p.230)。デモクリトスのエウテュミア的態度と同型(第Ⅴ章で再訪予告)。 | Ⅱ・Ⅴ |
| maladie à éruption / à irruption 〔仏〕 | 噴出の病/闖入の病〔確定〕 | エトナ論でのピジョーの言葉遊び的定式(p.230–231)。丹毒(érysipèle、repit per artus)等の急襲する病と大地の病理の相互照射。ペスト=病因論の地平への「出来事の闖入」(p.227)とも響き合う。 | Ⅱ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| morbidus aer / nosōdēs aēr 〔羅/希 νοσώδης ἀήρ〕 | 病める空気〔確定〕 | セミナの偶然の集結が大気を乱して生まれる(v.1096–1097)。元素として病むのではない(フィロンとの差異):作用は機械論的で、病的セミナが細孔を貫き原子の組織化を破壊する(p.233–234)。 | Ⅱ |
| casus 〔羅〕 | 偶然〔確定〕 | ペストの唯一の責任者。必然も目的性もない(p.233、237)。反神義論の要石:「神々が作用しない以上、神義論は不要」。 | Ⅱ |
| assimilation / crase 〔仏/希 κρᾶσις〕 | 同化/クラーズ(全面融合)〔確定〕 | 異国の空気を「おのれに似たものへ変える」(reddat sui simile、v.1124)同化は実は混合(mélange):エピクロス的混合は粒子の結合のみで、ストア的クラーズでは決してない(p.236注446)。病の吸収は食物または呼吸経路。 | Ⅱ・Ⅲ |
| contre-mythe / anti-théodicée 〔仏〕 | 反対神話/反神義論〔確定〕 | ピジョーの中心テーゼ:ルクレティウスのペストはエルの神話の正確なアンチテーゼ、「神話に対抗する機械」。神話に歴史的事実を対置し、宇宙的かつ地理的であることで神話を代置する(p.236–237)。 | Ⅱ |
| topique de la mort du juste 〔仏〕 | 正しき者の死のトピック〔確定〕 | ストア的であるのと同じだけエピクロス的な定型論題。フィロン『摂理論』I §37(エピクロス派の論法)とII §90(アレクサンドロスのトゥキュディデス引用)に痕跡(p.237–239)。 | Ⅱ |
| onomatothète / nomothète / inuentor rerum 〔仏・希/羅〕 | 命名者/立法者/事物の発見者〔確定〕 | エピクロスの言葉が創る「断層」:何も創造せず、事物を照らし、意味を与え、承認する。エピクロス主義の線的歴史観(前/後の区分、キリスト教との比較)の核(p.240)。 | Ⅱ |
| temps linéaire / temps cyclique 〔仏〕 | 線的時間/円環的時間〔確定〕 | ペストは出来事の線的時間(エピクロスへ向かう)で読むべきもの;弟子にとって時間は円環的=詩の再読の時間。第Ⅵ巻末尾で弟子は第Ⅰ巻(ウェヌス)・第Ⅲ巻(エピクロス)の光へ回帰する(p.240)。 | Ⅱ |
| anxius angor 〔羅〕 | 不安な苦悶〔確定〕 | ペスト記述の心身相関的極点(VI.1156以下):死の敷居での魂の全力の喪失に付き添う「離れがたい伴侶」。v.1231以下の「死の宣告を信じて勇気を失い横たわる」はトゥキュディデス的アテューミアの詩的定着(p.240–241)。 | Ⅱ |
| épreuve radicale 〔仏〕 | 根底的試練〔確定〕 | ペスト=物理的かつ道徳的実在として魂に課される試練。逆説:第Ⅵ巻のペストは不安・神経症・精神病の要素ではなく「エウテュミアの要素」(p.241)。A・ミシェルの「英雄的オプティミスム」「不幸の認識の上に築かれる幸福の哲学」と響き合う。 | Ⅱ・Ⅴ |
| lecture dualiste d'une pensée moniste 〔仏〕 | 一元論的思考の二元論的読解〔確定〕 | 第Ⅲ章冒頭(p.245)でキケローの『トゥスクルム』Ⅲ・Ⅳの仕事に予め与えられる規定。クリュシッポス(一元論)のキケローによる変形の核心として、第Ⅲ章全体の読解の鍵となる予定。第Ⅲ章読解時に増補。 | Ⅲ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| lecture cicéronienne de Chrysippe 〔仏〕 | クリュシッポスのキケロー的読解〔確定〕 | ピジョーが「ここで呼ぼうとする」歴史そのものの名。ピネル『疎外論』の直接引用(序文p.II、p.12note1)を承けて宣言される本章全体のテーマ(p.246)。 | Ⅲ |
| imagination culturelle 〔仏〕 | 文化的想像力〔確定〕 | 魂身の出会い=自然と文化、生物と芸術の出会いが巻き込むもの。クリュシッポス・アリストテレス・ポセイドニオス・キケローそれぞれの想像界への浸透が方法として要請される(p.247–248)。 | Ⅲ |
| insania quasi insanitas 〔羅〕 | インサニアはいわば非健全〔確定〕 | 『トゥスクルム』III.V.10。魂身アナロジーの語彙系列(insania animi/aegrotatio animi)の要石。アナロジー関係と非対称性を同時に際立たせる定式(p.250)。 | Ⅲ |
| dissymétrie 〔仏〕 | 非対称性〔確定〕 | キケローが第Ⅲ巻冒頭から強調する魂身関係の核心概念。判断する魂/診断される身体の非対称、治癒における意志の役割の非対称の二段階で展開(p.250–252)。第Ⅲ章全体の議論の出発点。 | Ⅲ |
| cum id ipsum quo iudicatur aegrotet 〔羅〕 | 判断する当のものが病むとき〔確定〕 | 『トゥスクルム』III.I.1(既出)。魂の病の自己言及的困難を凝縮した定式——判断能力そのものが病んでいる場合の判断可能性の問題(p.250)。 | Ⅲ |
| morbus / perturbatio / passio 〔羅〕 | モルブス/ペルトゥルバチオ/パッシオ〔確定・三択語彙〕 | ギリシア語 pathos の羅訳をめぐる古代の分岐点。キケローは morbus を避け perturbatio を選択——この翻訳選択自体が第Ⅲ章の主題の一つ。カルダーノはプリスキアヌス・クインティリアヌス・ホラティウスにより passio 語を復権(p.252)。ピネルの passions 語選択の文献学的前史。 | Ⅲ |
| furor / insania 〔羅〕 | フーロル/インサニア〔確定・対概念〕 | キケローが完全に区別する二つの実体。十二表法は furiosus にのみ後見手続きを留保(si furiosus escit)。insania は中間的義務遂行を妨げないが furor は完全な無能力状態(p.252–253)。 | Ⅲ |
| demens / dementia 〔羅〕 | デーメンス/デーメンチア〔確定〕 | ウルピアヌスとその後継者において furiosus・furor と競合する語として意味を回復。E・ルニエは医学進歩の影響を見るが、ピジョーは懐疑的(p.253–255)。エスキロールのモノマニー説との類比が示唆される(注43)。 | Ⅲ |
| tradition philosophico-juridique 〔仏〕 | 哲学的=法的伝統〔確定〕 | 狂気の三大伝統(悲劇的・医学的・哲学的)のうち、法の語彙に定着することになる系列。『トゥスクルム』第Ⅲ巻の定義論はこの伝統を固定する(p.249)。 | Ⅲ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| atra bilis / atrabile 〔羅〕 | 黒胆汁〔確定〕 | カエリウス・アウレリアヌスによれば、キケローは atra bilis を字義通りではなく「深い怒り(altam iracundiam)」の意味で用いた。ウェルギリウス『アエネーイス』VIII.219–220(ヘラクレスの furor)にも同じ連想(p.260)。 | Ⅲ |
| Cicero medicus / Virgile médecin 〔羅・仏〕 | 医師キケロー/医学的権威としてのウェルギリウス〔確定〕 | ピジョーの一般化:「キケローと、さらにウェルギリウスまでもが医学的権威となるのは興味深い」(p.261)。18世紀カステリ医学辞典 insania 項にまで残る。pinel-virgile の中心テーゼの独立傍証。 | Ⅲ |
| Problème XXX 〔希、偽アリストテレス〕 | 『問題集』第XXX巻〔確定〕 | キケローがメランコリア=furor の同一視を引き出した唯一のプレ・キケロー的典拠。天才(哲学・政治・詩・諸技芸)と黒胆汁質の結合、ヘラクレス・アイアース・ベレロフォン・エンペドクレス・プラトン・ソクラテスを例に、ワインの酩酊を体質測定のパラダイムとする(p.261–263)。 | Ⅲ |
| Aristoteles quidem ait omnis ingeniosos melancholicos esse 〔羅〕 | 「アリストテレスは才知ある者はみなメランコリー質と言う」〔確定・定式句〕 | 『トゥスクルム』I.XXXIII.80。天才=メランコリーの結合を示す古典的定式。『占いについて』I.XXXVIII.81と対で、キケローが問題XXXを二度引用する証拠(p.263)。 | Ⅲ |
| cardiacus / cardiaca passio 〔羅〕 | カルディアクス/心臓病〔確定〕 | 『占いについて』でキケローが phreneticus と対比する語。ギリシア語カルディアの両義性(心臓筋/胃の起源)ゆえ、心臓か噴門部かが古代の係争点(ケルスス、カエリウス、ガレノス、p.263)。 | Ⅲ |
| systolē / tapeinōsis / deixis / eparsis / diachysis 〔希〕 | 収縮/沈降/膨張/高揚/弛緩〔確定・音写〕 | ゼノンに遡る情念の生理学的語彙一式。クリュシッポスがこれを精密化し、キケローも判断とともに注意深く記録する(p.264–265)。 | Ⅲ |
| opinio recens mali/boni praesentis 〔羅〕 | 目下の悪/善の新鮮な意見〔確定〕 | キケロー『トゥスクルム』IV.VII.15。aegritudo(悲苦)と laetitia(喜び)の定義の核。拡張・収縮は判断の論理的帰結という読み(p.265)。 | Ⅲ |
| monisme de Chrysippe / seine streng monistische Psychologie 〔仏・独〕 | クリュシッポスの一元論/厳密に一元論的な心理学〔確定〕 | ポーレンツの評言。判断を生理学的発現から切り離すことが不可能という考え。情念は判断と身体運動の不可分な「表裏(recto-verso)」——魂と身体の対立自体が無意味(p.266–267)。 | Ⅲ |
| dynameis 〔希 δυνάμεις〕 | 諸力〔確定・音写〕 | ポセイドニオスがガレノス的脳中心説の危険を感じ、魂の「部分」を語ることを拒んで採用する語(p.267)。クリュシッポス一元論からの後退の兆し。第Ⅲ章後段(ポセイドニオス論)への伏線。 | Ⅲ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| symmetria 〔希 συμμετρία〕 | 釣り合い〔確定・音写〕 | クリュシッポスの走者比喩の核心語。自然本性的な衝動が理法に従うことであり、しかるべき限度に至るまでのこと(p.268)。プラトン『ソフィスト』228cとの対比で二つの理解(客観的規範/行為そのもの)に分岐(p.269–270)。 | Ⅲ |
| telos / skopos 〔希 τέλος/σκοπός〕 | 究極目的/照準・目標〔確定・音写〕 | 客観的な目的(テロス)と主体が自らに提案する目標(スコポス)の一致。キケロー『善悪の究極について』III.VII.24の射手・俳優・舞踏の比喩に展開(p.269、271)。 | Ⅲ |
| paraphora / paraphrosynē 〔希 παραφορά/παραφροσύνη〕 | 逸脱・失敗/理性の逸脱(錯乱)〔確定・音写〕 | プラトン『ソフィスト』228cの無知の記述。的を外す射手のイメージで無知=魂の対象からのシュンメトリアの失敗を表す(p.269–270)。 | Ⅲ |
| poids du corps 〔仏/希 τὸ βάρος τοῦ σώματος〕 | 身体の重さ〔確定〕 | ポセイドニオスがクリュシッポスの走者比喩に向ける異論(ガレノス伝)。ロゴスと無関係な、行為への客観的抵抗——一元論への根本的批判の要石(p.271–272)。 | Ⅲ |
| pathētikon 〔希 παθητικόν〕 | 情念的部分〔確定・音写〕 | ポセイドニオスが身体と魂の対決を回避するために用意する中間項。キケローはこれを持ちえない、とピジョーが指摘——次項(ポセイドニオス論)への伏線(p.272)。 | Ⅲ |
| vetus illa descriptio / palaios logos 〔羅/希〕 | あの古い区分/古い言説〔確定〕 | キケローが選ぶピュタゴラス=プラトンの魂の二分法。ガレノスも「古い言説」と呼ぶ(p.273–274)。一元論的情念記述を二元論的に解釈する試みの起点。 | Ⅲ |
| lecture dualiste d'une philosophie/pensée moniste 〔仏〕 | 一元論的哲学の二元論的読解〔確定・本書の鍵命題〕 | 頁245で予告され頁275で完全に宣言される、ピジョーの中心テーゼ。クリュシッポスの理論は機構を保持し病因論だけ変えれば二元論者にとって最良の情念記述となる(p.275)。 | Ⅲ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| proendēmein 〔希 προενδημεῖν〕 | あらかじめ住まう〔確定・音写、ポセイドニオスの造語〕 | 未来の出来事をあたかも現前するかのように扱い、あらかじめ自己に型どること。プレメディタチオーの核心語。「未来の存在」を作る、存在の強度にかかわる時間内変容(p.276–278)。 | Ⅲ |
| praemeditatio / defetigatio 〔羅〕 | 予めの心構え/倦み疲れによる鎮静〔確定〕 | 悲苦の予防と治療の二契機。ポセイドニオスでは心身相関的な時間内変容だが、キケローでは「教え」に還元され存在の変容を拒む(p.276、282–284)。 | Ⅲ |
| psycho-somatique 〔仏、ラフランクの評言〕 | 心身相関的〔確定〕 | ポセイドニオスの時間論に対するラフランクの形容。キケローには「考えられない」ものとしてピジョーが対比(p.279)。 | Ⅲ |
| Zopyre / physiognomonie 〔希・仏〕 | ゾピュロス/人相学〔固有名・確定〕 | 『トゥスクルム』IV.80、『運命について』の逸話。生得の悪徳を人相から見抜かれたソクラテスが、理性によってそれを除去したと応じる——生得性と自由意志の関係を示す範例(p.279–280)。 | Ⅲ |
| chirurgien / médecin 〔仏、比喩的対概念〕 | 外科医/内科医〔確定〕 | ピジョーの中心的対比。キケロー=クリュシッポスは情念の根絶(エラディカシオン)を実践する外科医の側、ポセイドニオスは薬と時間を信じる内科医の側(p.280–281)。ピネル §V の原則との構造的対応(v38参照)。 | Ⅲ |
| dressage / éducation 〔仏〕 | 調教/教育〔確定・対概念〕 | キケローの純化的二元論の帰結:魂と身体の中間項を認めないため調教は存在せず教育のみが存在する(p.279)。ポセイドニオス的心身相関の拒絶と対応。 | Ⅲ |
| prosphaton / recens 〔希 πρόσφατον/羅〕 | 新鮮さ〔確定〕 | ストア的概念のキケローによる独自解釈:悪の新鮮さは時間の長さではなく主体の瞑想(コギタチオー・ディウトゥルナ)によってのみ消える——「時間ではなく主体の判断」というキケローの一貫した主張の核(p.283–287)。 | Ⅲ |
| morbus / aegrotatio 〔羅〕 | モルブス(病)/アエグロタチオー(慢性の弱り)〔確定〕 | 『トゥスクルム』IV.X.23の魂身アナロジー体系の基礎区分。擬ガレノス『定義集』の nosos/arrōstēma に正確に対応。慢性性は病の陳旧化ではなく別種を指す点に注意(p.287–289)。マニー/フレニティスの対立がその適用例。 | Ⅲ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| fièvre erratique 〔仏/擬ガレノス πυρετοὶ ἐρρατικοί〕 | 彷徨する熱病〔確定〕 | クリュシッポスが情念のアナロジーに選ぶ病像。規則性も規範もなく、医師がカイロスを捉えられない病——情念の自律性の隠喩(p.291)。 | Ⅲ |
| procliuitas 〔羅〕 | プロクリウィタス(傾きやすさ)〔確定・音写〕 | 『トゥスクルム』IV.XII.27–28。特定の病・悪徳への分配的・種特定的な傾き。発作の頻度を定義し連続性を定義しない。健康状態と一致しうる点でストア教説の核心的矛盾を露呈(p.291–294)。 | Ⅲ |
| decliuitas 〔羅、カエリウス・アウレリアヌス〕 | デクリウィタス(病への傾き)〔確定・音写〕 | カエリウス『急性病』I.30、フレニティスへ向かう傾向。プロクリウィタスと同じくディアテーゼ(現在の状態)を指す。既出頁217注357の伏線をここで回収。セネカ書簡94.13とも接続(p.292)。 | Ⅱ・Ⅲ |
| euemptōsia 〔希 εὐεμπτωσία〕 | 病みやすい傾向〔確定・音写〕 | ポセイドニオスの用語。クリュシッポス批判の核心:非賢者の魂は「病みやすい傾向を持つ健康な身体」に比較すべきで、既に病んだ身体にではない(p.294–296)。 | Ⅲ |
| fonction / partie 〔仏、ガレノスの区別〕 | 機能/部分〔確定・対概念〕 | ガレノスのクリュシッポス批判の核心:判断は魂の機能であって部分ではない。魂の健康と身体の健康の厳密なアナロジーは不可能という結論(p.297)。 | Ⅲ |
| metriopatheia 〔希 μετριοπάθεια〕 | メトリオパテイア(節度ある情念)〔確定・音写〕 | ペリパトス派の立場。快と苦の均衡(心臓における熱冷の均衡に対応)から生じるメソテース。キケローの批判対象。ピネル §V の原則(3-2既出)の哲学的源泉の一つ(p.298–299)。 | Ⅲ |
| saut de Leucate 〔仏、キケローの比喩〕 | リュウカス岬の飛び込み〔確定・比喩〕 | 『トゥスクルム』IV.XVIII.41。悪徳に限度を求めるのは、身を投げた者が望めば止まれると考えるようなもの。情念は生まれながらに病そのもの、というキケローの中心テーゼの比喩(p.299)。 | Ⅲ |
| pierre lancée 〔仏、アリストテレスの比喩〕 | 投げられた石〔確定・対抗比喩〕 | 『ニコマコス倫理学』III.1114a13。行為の原理は投げる前は当人にあるが、投げた後は取り戻せない——情念ではなく情念的人間が病むという、キケローと対極の医学的構想(p.300–301)。 | Ⅲ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| nihil negativum / nihil positivum 〔羅、カント〕 | 負性無/正性無〔確定〕 | カント「哲学における負量の概念の導入について」。対立する二つの力の拮抗という「意味を持つ零」(−2+2=0)。ソクラテスの徳を「等しい大きさの反対緊張」として測る思考実験に応用(p.304–305)。 | Ⅲ |
| stoïcisme de l'effort / de la grâce 〔仏〕 | 努力のストア主義/恩寵のストア主義〔確定・対概念〕 | ピジョーの区分。前者はセネカ・エピクテトス・マルクス・アウレリウスへ強まる禁欲の系譜、後者は賢者を「最も調和した存在」とする系譜——舞踊の比喩(De finibus既出)に結実(p.306)。 | Ⅲ |
| tempérant / continent 〔仏、アリストテレス enkratēs〕 | 節制の人/自制の人〔確定・対概念〕 | 『ニコマコス倫理学』1151b33。節制の人は悪しき欲望自体を持たず規則外に快を見出さない;自制の人は欲望を持つが従わない。恩寵は前者に由来(p.306–307)。 | Ⅲ |
| furor / insania(賢者への適用) | 賢者に降りかかりうるものと降りかかりえないもの〔確定〕 | 『トゥスクルム』III.V.11:「フーロルは賢者に降りかかりうるが、インサニアは降りかかりえない」。キケローの明白な当惑(sed haec alia quaestio est)を生む核心的難問(p.309)。 | Ⅲ |
| crocydisme / carphologie 〔仏/希〕 | クロキュディスム/カルフォロジー〔確定・音写、既出語の再確認〕 | フレニティス患者が見る幻視(髪・羊毛の房・糸)。ガレノスの自験例——判断は無傷でも感覚が冒される場合の実例(p.310–311)。 | Ⅰ・Ⅲ |
| schizophrénie bienheureuse 〔仏、ピジョーの造語〕 | 至福の統合失調〔確定・ピジョーの命名〕 | プロティノス『エネアデス』I.IV.10の一節(鏡が砕けても理性は像なき思考として働き続ける)にピジョーが与える呼称。賢者の狂気問題への一元論(魂のみの一元論)による解決(p.313)。 | Ⅲ |
| praecipitatio irreuocabilis 〔羅、セネカ〕 | 取り返しのつかない転落〔確定〕 | 『怒りについて』I.VII.4。リュウカス岬・投石の隠喩の反復——熟慮と後悔を断ち切る不可逆的過程(p.316)。キケローのペスト的情念論と完全に呼応。 | Ⅲ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| corps médicalisé 〔仏〕 | 医学化された身体〔確定〕 | ポセイドニオスがストア主義に与えたもの。クリュシッポスの漠然とした一元論的身体に対し、プラトン的三分法を採る事実上の二元論的・医学的身体観(p.319)。 | Ⅲ |
| temperamenta feruidi 〔羅〕 | 沸騰した気質〔確定〕 | セネカ『怒りについて』II.19.1。怒りやすい生得的気質。四元素(火・水・空気・大地)とその特性(冷・熱・乾・湿)の混合に由来(p.320–321)。 | Ⅲ |
| allopathie 〔仏〕 | アロパチー(対立療法)〔確定〕 | セネカの治療原理:反対の性質で治療する。冷たい自然を温めれば別の悪徳(悲しみ)を助長するリスクがあるため相対主義的治療が必要(p.322)。 | Ⅲ |
| phantasia / hormē / synkatathesis 〔希〕 | 表象/衝動/同意〔確定・音写〕 | 情念発生の三段階の基本語彙。セネカ『怒りについて』II.1–4、『書簡』113.18で精緻に記述される、感情心理学の古典的枠組み(p.324–326)。 | Ⅲ |
| propatheia / antepassio 〔希 προπάθεια/羅〕 | プロパテイア(前駆情念)〔確定・音写〕 | セネカが記述した情念以前・意識以前の状態。起源的に医学の語(プルタルコス)。エウエムプトーシア(プロクリウィタス)と混同すべきでない、遅れて現れる概念(p.326–327)。「セネカの無意識の発見」の核心語。 | Ⅲ |
| chrōma esti poiotēs sōmatos horaton 〔希〕 | 「色とは身体の目に見える性質」〔確定・定式句〕 | 擬ガレノス『哲学史』。ピュタゴラス=身体の可視的表面、ゼノン=物質の第一形態としての色。医師とモラリスト双方の関心事(p.329)。 | Ⅲ |
| hoc unum meum est 〔羅、セネカ『狂えるヘラクレス』1068行〕 | 「これだけが私のものだ」〔確定・定式句〕 | 家族殺害直前、ヘラクレスの発話。他の行為はすべて命じられたが、これだけは彼自身が欲した——意識の場の外にあるもう一つの自己の発見を刻印する句(p.329)。 | Ⅲ・Ⅳ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| conditio nascendi et corporis temperatura 〔羅〕 | 生得の質と身体の気質〔確定〕 | セネカ『書簡』11.6。魂のあらゆる努力にもかかわらず固定されたままの生物学的所与。テンペラトゥーラはギリシア語クラーシス(元素の均衡)の訳語(p.330)。 | Ⅲ |
| croissance résout la dualité 〔仏、ピジョーの定式〕 | 成長が二元性を解く〔確定〕 | 一元論的解決の核心。ゼノン(エレア派)の運動否定の逆説を歩行が解くように、身体と魂の対立を成長(継続的な我有化=オイケイオーシス)が解く(p.330–331)。 | Ⅲ |
| oikeiōsis 〔希 οἰκείωσις〕 | 親和・我有化〔確定・音写〕 | 各年齢が固有に持つ自然な親和性。ガレノスの成長理論(植物的魂→憤激的魂→理性的魂)とセネカ『書簡』121.15–16の植物・年齢の比喩に展開(p.331)。 | Ⅲ |
| gnōthi seauton(心身相関的読解)〔希、プルタルコス〕 | 「汝自身を知れ」の心理生理学的解釈〔確定〕 | 形而上学的でも心理学的でもなく心理生理学的な解釈。自己を知るとは自分の身体の最も深い出来事にまで自分を知ること(p.332–333)。 | Ⅲ |
| le seizième malade 〔仏、ピジョーの呼称〕 | 第16番目の患者〔確定・固有呼称〕 | ヒポクラテス『流行病』III最終症例(端正で穏やかな青年の穏やかな錯乱)。徴候は性格の規範から遠いほど不安を掻き立てるという原則の典拠(p.334–335)。アテナイのペストと並ぶ医学的トポス。 | Ⅱ・Ⅲ |
| Harpaste 〔固有名、セネカ『書簡』50〕 | ハルパステー〔固有名・確定〕 | セネカが「相続した」盲目の道化女。自らの盲目に気づかない——狂気を自己の病についての意識の欠如として定義する寓話(p.336–337)。無知(アグノイア)=最も重篤な魂の病というテーゼの範例。 | Ⅲ |
| syllogisme de la mélancolie 〔仏、ピジョーの命名〕 | メランコリーの三段論法〔確定〕 | セネカ『書簡』85.24のストア的三段論法(勇敢な者は恐れなき者、恐れなき者は悲苦なき者、ゆえに幸福)。排除される恐怖と悲しみがメランコリーの固有症状であることから命名(p.343)。ケルスス伝ヒポクラテス箴言と接続。 | Ⅲ |
| metabolē 〔希 μεταβολή〕 | 変化・急進的変容〔確定・音写、医学的隠喩〕 | 賢さへの到達を指すストア的用語(クレメンス・アレクサンドリヌス伝)。賢者の健康は根本的かつ決定的(sapiens recidere non potest)——身体の健康との類比が破れる地点(p.342)。 | Ⅲ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| insania publica 〔羅、アリストン・ド・キオス〕 | 公的な狂気・社会的狂気〔確定〕 | セネカ『書簡』94.17。誤った意見に苦しむ社会的振る舞いの狂気と、身体に起因し医師に委ねられる狂気の対比。医師と哲学者の分担を再確認する概念(p.344)。 | Ⅲ |
| leuamentum 〔羅〕 | 緩和薬〔確定〕 | 治癒不能な病において苦痛を和らげる薬。セルスス由来の語。哲学もまた古く硬化した魂の悪を完全には除去できない場合があるという認識と対応(p.346)。 | Ⅲ |
| solacium / remedium 〔羅〕 | 慰め/薬〔確定・対概念〕 | 慰めは魂に、薬は身体に属するという分担。しかし誠実な慰めは薬に転じうる(セネカ書簡78「in remedium cedunt honesta solacia」)——両者を架橋する鍵概念(p.349–351)。 | Ⅲ |
| tetrapharmakos 〔希 τετραφάρμακος〕 | テトラファルマコス(四重の薬)〔確定・音写〕 | エピクロス派の四教説(神を恐れるな、死を懸念するな、善は得やすい、苦は耐えやすい)。医師メノンの四薬混合という原義を持つ隠喩——ルクレティウス第Ⅴ巻序歌のsolaciaと接続(p.349–350)。 | Ⅲ |
| totius uitae remedium 〔羅〕 | 生涯全体の治療薬〔確定〕 | 「死を軽蔑せよ(contemne mortem)」——哲学が医師に対して持つ利点。一つの病でなく生涯全体のための急進的・絶対的療法(p.352)。 | Ⅲ |
| grandeur et limite du modèle médical 〔仏、ピジョーの定式〕 | 医学モデルの栄光と限界〔確定〕 | 第Ⅲ章の結びのテーゼ。クリュシッポス・キケロー・セネカの魂身アナロジーを総括し、プラトン『ゴルギアス』の外科的モデル、プルタルコス『神罰の遅延について』の体系的アナロジーへ導く(p.352–353)。 | Ⅲ |
| isonomia / monarchia 〔希、アルクマイオン〕 | 諸力の等法性/君主制〔確定・音写〕 | 健康=諸力の均衡(イソノミア)、病=一つの力の専制(モナルキア)という最古の医学的定式。政治的隠喩が生理学へ流用された例(p.353)。既出頁297注207と対応。 | Ⅰ・Ⅲ |
| anabolē timōrias 〔希 ἀναβολὴ τιμωρίας〕 | 刑罰の延期〔確定・音写〕 | プルタルコス『神罰の遅延について』の医学的登録簿に属する語(オリバシオスでは腫瘍を和らげる意)。「なぜ神は遅く来るのか」という神義論の中心概念(p.357)。 | Ⅲ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| pensée biologique de Plutarque 〔仏、ピジョーの命名〕 | プルタルコスの生物学的思考〔確定〕 | 『神罰の遅延について』を貫く七項目の一貫性(有機的全体性・自然な創造・技術の価値・伝染・時間と成熟等)。ヴェルニエール説(挿話的)へのピジョーの反論の核(p.360、363)。 | Ⅲ |
| naevus / kēlis 〔羅/希 κηλίς〕 | 母斑・悪の生得のしるし〔確定・医学用語〕 | プルタルコス『神罰の遅延』562A。悪徳の生得的徴表を疣や黒子に喩える。動物と違い人間だけが悪を隠し善を装いうるため、この徴表が神にのみ見える診断材料となる(p.362)。 | Ⅲ |
| epitēdeiōs echonta pros tēn autēn noson 〔希〕 | 「同じ病に向けて適性を持つ」〔確定・定式句〕 | プルタルコス561D。ビオン・ド・ボリュステネスへの反論の核心——遺伝的処罰を正当化する terrain 概念の古代的定式(p.361)。 | Ⅲ |
| harmonie / physiologie(対比)〔仏〕 | 調和対生理学〔確定〕 | ピジョーが提案するプルタルコス対ストア派の対立の本質。ストア派は世界をゾーオンと見なすが解剖学までは踏み込まない一方、プルタルコスは真に生理学的な宇宙記述(『顔について』928c)を行う(p.365)。 | Ⅲ |
| crase du tout / krasis di'holōn 〔希 κρᾶσις δι᾽ ὅλων〕 | 全体を貫く混合〔確定・音写〕 | ストア的ヘクシス概念の基礎モデル。実体の同一性を保ったまま完全に混合する——海に落ちた一滴のワインの比喩(p.364)。道徳的ヘクシス(徳の相互依存)の基礎。 | Ⅲ |
| recto-verso indissociable(総括的定式)〔仏〕 | 不可分な表裏(総括)〔確定〕 | 第Ⅲ章の総括で再確認されるクリュシッポス一元論の核心公式。判断と生理学的発現は不可分——魂の病を身体の病に還元したことは一度もない、という重要な留保付き(p.368)。 | Ⅲ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| thymos / bouleumata 〔希 θυμός/βουλεύματα〕 | テューモス/ブーレウマタ〔確定・音写〕 | エウリピデス『メデイア』1078–1080行の核心語。情念と理性的意志の対立か、同一起源の力の優劣かをめぐる、古代から現代(シュレジンガー・シャーデヴァルト・スネル・ディラー)まで続く解釈史の焦点(p.376–378)。 | Ⅳ |
| pneuma symphyton 〔希 πνεῦμα σύμφυτον〕 | 生まれながらの息〔確定〕 | クリュシッポスの魂の定義(ガレノス伝)。身体全体を貫き行き渡り、生の調和(シュンメトリア)がある限り持続する。声・視・聴等、通過箇所に応じ異なる名で呼ばれる同一実体(p.378)。 | Ⅳ |
| hēgemonikon 〔希 ἡγεμονικόν〕 | ヘーゲモニコン(支配的部分)〔確定・音写〕 | 魂のうちですべてが流れ込む中枢。心臓か頭かをめぐる医師と哲学者の対立——座は逃れがたいが知覚も判定基準も明白でない、というクリュシッポスの結語(p.378)。 | Ⅳ |
| anathymiōmenon / anathymiasis 〔希 ἀναθυμιώμενον/ἀναθυμίασις〕 | 蒸気のように立ちのぼるもの/発散〔確定・音写〕 | クリュシッポスが民衆の直観を説明する語。悲しみ・怒り・欲望が心臓から蒸気として立ちのぼり顔と手に現れる——情動の可視化の生理学的説明(p.379)。 | Ⅳ |
| megalosplanchnia 〔希 μεγαλοσπλαγχνία〕 | メガロスプランクニア(臓腑の膨張)〔確定・音写、本章の鍵概念〕 | エウリピデス『メデイア』109行、乳母の台詞。ヒポクラテス集成にも見える語で苦い胆汁の存在と結びつく。メデイアが脳・心臓・肝臓の三臓腑すべてを堅固に備えていることを示す、とガレノスは解釈(p.382–383)。 | Ⅳ |
| Léontios 〔固有名、プラトン『国家』IV.439E〕 | レオンティオス〔固有名・確定〕 | 死体を見たい欲望と嫌悪を同時に感じ、欲望に負けて自らを罵りつつ見た人物。ガレノスがクリュシッポス批判に用いる、判断に対する情念の還元不可能性の範例(p.383–384)。 | Ⅳ |
| tragique moniste / tragique du pathos 〔仏、ピジョーの対概念〕 | 一元論的悲劇/パトスの悲劇〔確定〕 | エウリピデスのテクストに内在する二つの読解可能性。前者はストア的(クリュシッポス的)、後者はセネカ『メデイア』に見出される情念の悲劇(p.384)。第Ⅳ章の分析枠組み。 | Ⅳ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| parataxe 〔仏、ピジョーの分析概念〕 | パラタクシス(並置)〔確定〕 | 因果(従属構文=イポタクシス)に対する、徴候・情動の「直接与えられた不可分なもの」としての並置。サッポーのテューモス=吐き気+苦痛(p.390)、『流行病』第Ⅲ巻の徴候記載(p.393末)に見出され、アポロニオス(神経の因果的説明)やガレノス(月経↔悲しみの因果)によって因果へ翻訳される、というのが本章の統一的枠組み。頁275の「一元論の二元論的読解」の詩学的対応物として本紀要が重視する概念(読解ノート七・その二)。 | Ⅳ |
| asê 〔希 ἄση〕 | アセー/吐き気〔確定・音写〕 | カルディアー(心臓部)の吐き気。サッポー断片1・アプロディーテー讃歌、エウリピデス『メデイア』245行、『神聖病論』(悲しみ=吐き気をフレグマ・脳に帰属させる論争的転用)に貫通する鍵語。リトレ「不安」、グレンゼマン「嫌悪(エーケル)」等の心理化訳をピジョーは斥け、生理学的意味の保持を主張(p.388–391)。 | Ⅳ |
| dysthymie érotique 〔仏、ピジョーの造語的用法〕 | 官能的ディステュミー〔試訳〕 | サッポーが創始したとされる「感情と身体の関係」の型。テューモスの悪しき状態(デュステューミアー)が恋愛的文脈で用いられる場合を指す(p.388)。西洋的感受性の歴史の起源としてピジョーが位置づける。 | Ⅳ |
| prophasis 〔希 πρόφασις〕 | プロファシス/誘発因〔確定・音写〕 | 『メデイア』の病因論における「引き金」。閨の遺棄(生理学的反応)とイアソーンの裏切り(心理学的反応)という二重の記入を担う語(p.391)。エウリピデスが単一原因に還元せず複数の秩序(人種・性・気質・プロファシス)を開いたまま保つことの要となる術語。 | Ⅳ |
| dysanios 〔希 δυσάνιος〕 | デュサニオス〔確定・音写〕 | 『流行病』第Ⅲ巻第11患者(タソスの女)を形容する語。ガレノスはクリティアース断片に依拠し「小事にも大事にも他人より長く悲しみ憂鬱である者」と注釈(p.394)。σκυθρωπόςと同義とされ、悲劇語彙の医学への流入を示す一例(読解ノート七・その三)。 | Ⅳ |
| skythrôpos 〔希 σκυθρωπός〕 | スキュトローポス(塞ぎ込んだ)〔確定・音写〕 | 『流行病』第Ⅲ巻第14患者(キュジコスの女)を形容する語。ピジョーが「きわめて明確に悲劇の語彙に属する」と断定する語で、アイスキュロス・エウリピデス悲劇に頻出。医学が悲劇から借用した語彙の代表例(p.395)。 | Ⅳ |
| înes / inion 〔希 ἴνες/ἰνίον〕 | 神経(腱)/項〔確定・音写〕 | アポロニオス『アルゴナウティカ』Ⅲ・761–765行、メデイアの恋の苦悶の記述に現れる語。心臓(カルディアー、詩的伝統)から神経(アレクサンドリア医学、ヘロフィロス・エラシストラトスの遺産)へと情動の座が移される決定的な語彙転換を示す(読解ノート七・その二、末尾「メデイアの臓腑は細い神経になった」)。 | Ⅳ |
| 原語 | 訳語(私案) | 本書での位置・含意 | 関連章 |
| Medea fiam / Medea nunc sum 〔羅、セネカ『メデイア』v.171・910〕 | メデイアになろう/今や私はメデイアだ〔確定・音写〕 | D・ヘンリー=B・ウォーカー論文が跡づける存在論的階梯(Medea superest v.166→Medea fiam v.171→Medea nunc sum v.910)。「メデイアであること」が固定した属性ではなく、行為を通じて到達される存在の水準(ニヴォー・デートル)であることを示す定式。第Ⅳ章の理論的核心(読解ノート七・その四)。 | Ⅳ |
| passage à l'acte 〔仏、ピジョーの分析概念〕 | 行為への移行〔確定〕 | 情念の蓄積が後戻り不能な行為(アクト)へ奔出する過程。ストア的緊張(タンシオン)の概念を軸に、エウリピデス・セネカ双方の悲劇構造を統一的に説明する枠組み(p.396–398)。 | Ⅳ |
| anti-sage 〔仏、ピジョーの造語〕 | 反賢者〔試訳〕 | 「メデイアは賢者と等しくない。彼女は反賢者、知恵の黒い太陽」(p.404)。F・デュポンのロマン主義的読解(メデイアの狂気を賢者の境地と等置する説)へのピジョーの批判的対置概念。賢者の沈黙(空虚)とメデイアの沈黙(自然の物音に満ちた充溢)の対比を伴う。 | Ⅳ |
| viscera 〔羅、セネカ『メデイア』v.42・1013〕 | 臓腑〔確定・音写〕 | 劇の冒頭(v.40–43)と末尾(v.1009–1013)を枠づける、生贄・自己・子供たちの間で宙吊りにされたまま指示対象を明かさない語。コスタが提示する四仮説(イアソーンとクレウーサ/子供たち/婚礼供犠/メデイア自身)とピジョーの結論(「一貫性と知恵? これは狂乱的な自己破壊である」)。七・その一のメガロスプランクニアと直接に共鳴する語(p.404–405)。 | Ⅳ |
| se uincere 〔羅、セネカ『メデイア』v.394〕 | 自己に打ち勝つ〔確定〕 | 乳母の予感の一句。情念と理性の対立に何ら負うところのない、自己自身に対する勝利。後段『狂えるヘラクレス』序幕の同一表現との比較のための伏線(p.400–401)。 | Ⅳ |
| amour-médecin 〔仏、アレタイオスの逸話に対するピジョーの呼称〕 | 恋する医者〔確定〕 | アレタイオスがメランコリー章末で伝える逸話——消耗した若者が恋によって癒される(エローティ・イエートロー)。カエリウス・アウレリアヌスの「愛は狂気の治療たりうるか」という結語的問いに接続される医学的伝統(p.406)。 | Ⅳ |
初版:2026年7月10日(Avant-propos)。第2版:同日(Introduction、11語追補)。第3〜5版:同日(第Ⅰ章、計16語追補)。第6版:同日(第Ⅰ章第一部読了、11語追補・médecine philosophique 増補)。第7版:同日(第Ⅱ部「フレニティス概念」前半、8語追補)。第8版:同日(第Ⅱ部「フレニティス概念」中盤、9語追補)。第9版:同日(第Ⅱ部「フレニティス概念」読了、6語追補)。第10版:同日(第Ⅱ部「マニーの定義と治療」読了、7語追補)。第11版:同日(第Ⅱ部「恐水病・同性愛」読了、6語追補)。第12版:同日(第Ⅰ章読了=メランコリー章・リペマニー、8語追補)。第13版:同日(第Ⅱ章「アトミストたち」冒頭=エピクロスの健康論、7語追補)。第14版:同日(第Ⅱ章「エピクロスの健康論」読了、9語追補)。第15版:同日(第Ⅱ章「アスクレピアデス」前半=反ヴィタリスム、5語追補)。第16版:同日(第Ⅱ章「アスクレピアデス」節読了、4語追補)。第17版:同日(第Ⅱ章「ルクレティウス」第一項=メランコリー診断論争、7語追補・taedium uitae・mal d'être 増補)。第18版:同日(第Ⅱ章「伝染——認識論的問題」〜ペスト論前半、15語追補)。第19版:同日(第Ⅱ章読了=ペスト病因論・反神義論、10語追補)。第20版:同日(第Ⅲ章開始=ピネル直接引用・トゥスクルム定義論、9語追補)。第21版:同日(フーロル=メランコリー・問題XXX・クリュシッポス一元論、9語追補)。第22版:同日(走者比喩・キケロー二元論の核心、7語追補)。第23版:同日(ポセイドニオス時間論・外科医対内科医・魂身アナロジー、8語追補)。第24版:同日(プロクリウィタス・ガレノス批判・メトリオパテイア論争、8語追補)。第25版:同日(賢者の狂気・カント負量・プロティノス、7語追補)。第26版:同日(セネカ『怒りについて』・情念発生論・プロパテイア、7語追補)。第27版:同日(ルキリウス書簡・成長論・ハルパステー、8語追補)。第28版:同日(アリストン論争・solacium/remedium・医学モデルの限界、7語追補)。第29版:同日(プルタルコス『神罰の遅延』・生物学的思考・第Ⅲ章総括、6語追補)。第30版:同日(メデイアの臓腑・クリュシッポス対ガレノス論争、7語追補)。第31版:2026年7月11日(「エウリピデスの病」項=パラタクシス・アセー・臓腑から神経へ、7語追補)。第32版:2026年7月11日(「セネカの『メデイア』」項=Medea nunc sum・臓腑のありか・反賢者、6語追補)。頁数のうち
※印は目次OCRによる概数で、原本照合前。「序 p.○」「第Ⅰ章 p.○」の頁は原画像で確認済み。
← 関連資料:
章構成と頁対応(読解案内)|
読解ノート(一)Avant-propos|
読解ノート(二)Introduction|
読解ノート統合版(三・その一〜五・その五)|
「ピネルの古典的素養と情念の臨床化」